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さいあむ百景
第58回 「タイ人女性が日本人と結婚する理由」
 
バンコクの日本人専用カラオケクラブで働く子たちの殆んどの理由は【金】である。中には学費を自ら捻出するために働く大学生もいるが、大概は貧困な田舎から出てきた極めて低学歴の子が多い。当然、高校や中学しか出てない子が働ける職場は限られている。初めは零細工場や食堂などに勤める子もいるが、やがて友達の紹介などでタニヤなどの店に流れる子もいる。もっとも、高額収入の噂を聞いて直接田舎からタニヤに行く子もいるだろう。実は【金銭】以外の目的に日本人との結婚を考える子も多い。日本人と結婚できれば同時に生活の安定が約束される。不誠実で遊び好きのタイの男と違って少なくとも日本人には責任感がある。かつて日本人クラブで働いていた子が駐在員や日本人旅行者と結婚した事例は山のようにある。しかも一夜にして巨万の富を得た伝説のような実話もある。
 つい先日、タニヤで働く顔馴染みのTから電話が来た。「ねぇ、お願いがあるの」嫌な予感がした。大概の場合は金銭的な問題である。たまに日本人とのトラブルもある。以前まではネタになると思って一肌脱いだこともあったが、下手に深入りしてとんでもない火傷を負ったことがある。「キジも鳴かずば撃たれぬものを」である。そんな不条理な事件に巻き込まれてからは極力関わらないことにしていた。ところがTには借りがある。2年前に胃癌手術で入院したときにわざわざ見舞いに来てくれた恩がある。無碍に断れない。Tからの相談は突拍子もない話だった。「日本人と結婚することになったので一緒にブリラムまで行って欲しい」と言う。「冗談じゃない。なんで親戚でもないオレが結婚式に出席するんだ?」ましてやその日本人とは縁も所縁もない他人である。「ねぇ、お願い。友達じゃない」都合のいいときだけ友達するのはタイ人の特権だ。仕方なく馴初めを訊くと、昨年の秋頃、関東に住むY氏が初めてタイに遊びに来てTが働くタニヤの某店で出逢った。そこでY氏にひと目惚れされて気に入られる。以来Y氏は毎月のようにタイに通った。そこまではよくある話だが、なんと3回目に訪タイした1月にTの田舎まで行って両親に会って結婚まで決めてきたそうだ。タイ語もまったく話せない50歳にしては、何ともバイタリティーのある男である。
 Y氏は離婚経験者。建築業を営んでいたが散財癖のある悪女のような嫁によって莫大な借金を負い、家を失いクレジットカードも作れない禁治産者になった。今では小さなアパートに住みながら細々と仕事を続けている。そんな男がTと知り合って僅か5ヶ月で結婚。それにしても、なぜバツイチで資産も無い日本人と結婚を決めたのか不思議に思った。実は冗談で「結納金は400万円」と言ったらすぐに了承したというのだ。「へぇー、そりゃあ凄い」たとえ失敗しても金は残る。上手くいけば姉妹や義兄弟が合法的に日本に行ける。新郎のY氏は「将来はタイ料理屋でも開業するかな」と気楽にのたまうが、一方のTは虎視眈々とタイマッサージ店を計画していた。果たしてこの2人の間に愛はあるのか。それに彼が住む人口の少ない田舎町でタイの文化が受け入れられるのだろうか。
 なにはともあれ3月某日ブリラム県の田舎で行われた派手な結婚式は300人の出席者を招いて無事に終焉。後は婚姻届の手続きを済ませて日本に行く日を待つだけ。さて、この話は単なる一例に過ぎないが、底辺で生きるタイ人が年配の日本人と結婚する理由は紛れもなく貧困からの脱出に他ならない。さらに日本上陸の後に密かに次なる野望を秘めていることもお忘れなく。もちろん純粋に愛し合って結婚した事例も数多くあるようですが、あながち僕の周りでは上手くいっているケースは極少。いずれにしてもタイ人と結婚する日本人は相当の忍耐力と親戚縁者親兄弟すべての面倒をみれるだけの財力が必要ですぞ。
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